ことなかれ主義

ここ数年ご無沙汰していた知人から、突然電話をもらいました。

聞く所によると、会社のリストラ候補にあがったらしく、肩叩きをされたので転職先を探しているとのこと。

私の取引先の中堅企業に勤務する彼は、社内でも重要なポストに就いていたのですが、私の知る限りでは、きわめて安定志向の人間であり、言い換えれば「ことなかれ主義」といった人間の一人でもあったような気がします。

私たちは誰でも、自分や家族の人生が平穏無事であることを願うものですが、そうは言っても現実は厳しいもので、人生には予期しないできごとが次々と持ち上がり、自分の思い通りにはならないものです。

決して「ことなかれ主義」が悪いなどと、批判しようとは思いませんが、ひたすら何事も起こらないようにと、無事ばかりを望む消極的な姿勢は、ある意味「現実からの逃避」に他なりません。

人生の逆境時に必要な「人間力」を育てるのは、現実においての経験だけであり、それによって人は逆境に立ち向かえる筈です。

現代社会においては何処を見渡しても「安定した場所」など無いように思えますが、実際には「安定した人」という人間は存在するのです。


会社を例に挙げれば
「この人はリストラの対象にはならないだろうなぁ?」と思う人が居て、
「仮に辞めたとしても食いっぱぐれはないだろうなぁ」なんて想像する人物が、世の中には大勢居るものです。

何故ならば、その人が「会社にとって必要な人間」だから、会社がどんな状況に陥ったとしても、決して手放すことの出来ない存在だからです。

会社にとって「欠かせない」人間であり、また、顧客にとっても「必要」な人間であること。
すなわち周囲から「求められる」人間は、どんな時代においても生き残るのです。

本物の安定というものを求めるのなら、「ことなかれ主義」という間違った安定を求めるのではなく、周囲から常に求められ続ける「存在価値」を持つ人間になるための方向転換こそが、
今の時代における、より確実な「安定志向」なのではないのかな?なんて、ふと思ったオヤジなのでした。