手紙

近頃はメールばかりで

手紙を書くことがめっきり少なくなりました。

メールと違い、手紙というものは

送ってしまうと手元に記録が残らないため、

たまに書くことがあっても、

どんな内容を書いたのか?

おまけに、いつ書いたのか?さえ忘れてしまいがちです。



先日、友人のお嬢さんが嫁ぐことになり、

結婚式に参列させていただいた際の出来事です。

披露宴の中で二人の馴れ初めが紹介される中、

進行役が突然、私に立つように促すので、

不思議に思いながらも立ち上がると

「今日こうして新婦のお父様が、

大切な一人娘を嫁がせるという大きな決断をした裏には、

ある人からの一通の手紙がありました」

との言葉に合わせ

新郎新婦と、両家のご両親に

深々と頭を下げていただいたものですから、

「エーッ!! オレ、いったい何を書いたっけ??」と

私の方はとまどうばかりでした。


あれは、友人が溺愛する娘に

「結婚したい人が居る」と告げられた頃、

それはもう3年くらい前のことだったと思います。

「どうだい、許してやったのか?」と尋ねる私に、

「嫁には絶対やらん!!」と、

頑なに首を横に振っていた友人でしたから

実は困り果てた奥さんから

密かに説得の協力を頼まれていたものの・・・

友人の気持ちも痛いほど解る気がする私には、

説得する気持ちにはなれませんでした。

そんな中、男同士顔を突き合わせて言うのは避け、

私の想いを精一杯手紙にしたためて

彼に送ることにしたのでした。


今にして思えば、どんなことを書いたのかも

まったく覚えてはいませんが、

友人の方も、その後何度も会うものの

互いに手紙のことなど一切触れないので、

手紙など存在しなかったようなものでした。

そんな経緯でしたから、私が送った手紙が

「彼の気持ちを少しは溶かすことができたのだ」

ということを知った時には、

嬉しさとともに、

手紙というものが持つ特別な存在感というものを

あらためて認識したのでした。

面と向かっては言えない言葉でも、

手紙には何故か書くことができるものです。

メールは便利なものではありますが、

やはり、文字に込められた想いの伝わり方は

手紙には到底かなうものではありません。

どうか皆様も、普段言いにくい言葉や

どうしても伝えたいことば

「ありがとう」

「愛しています」

「ごめんなさい」

文字に綴って送ってみられてはいかがでしょう。

あなたの想像を超えて

きっと相手に、想いが伝わる筈ですよ。