夫婦漫才

仕事で近くを通りかかったので、

親しくしている老夫婦を久しぶりに訪ねました。

お二人ともお元気そうで安心しましたが、

80歳を過ぎたご主人は相変わらずの毒舌家で

「アイツは馬鹿でコイツも馬鹿・・・

まったくロクな奴がおらん。

オレならもっと上手くやってやるのに」と、

政治家や役場のお偉いさんたちの話題を

アレコレと持ち出しては、怒り心頭のご様子。


まっ、いつものことなので、

「アハハ・・・困ったものですねぇ♪」と

笑いながら聞いてたんですが、

奥様の方といえば、

これもまた、いつものことで、

お茶を入れて下さいながら

「オジイさん、そんなに人様のことを

悪く言うもんじゃありませんよ」と

ご主人をなだめたり叱りながらも、

やがて

「本当にこんなに偉い人が、

私みたいなものと一緒に居て下さるんだから

なんだか申し訳ないみたいですよねぇ。

ありがたやありがたや」と、手を合わせながら

私に目配せして笑っていらっしゃる。


本来なら、過ぎるほどの毒舌を吐くご主人に対して

それを帳消しにするようにフォローし、

絶妙の合いの手をお入れになる奥さん。

いつもながら、夫婦漫才を見ているような

心地よい感覚を覚えながら、

このご主人が、影で奥さんに支えられてこそ

好き勝手に毒舌が吐けるように、

きっと私も気付かないところで、

家内に支えられるんだろうなぁ・・・と、

あらためて妻というものの有り難さを感じた、

毒舌家のオヤジなのでした。