愛の表現

昔からの友人宅にお邪魔しました。

友人夫婦には成人してすでに家庭をもつ子供が二人と、

ご両親もいらっしゃり、

現在は友人夫婦とご両親の四人で生活しています。

残念なことに、お父さんは数年前に脳卒中で倒れてから

身体の自由が利かなくなり、

ほとんど寝たきりの生活を送っていらっしゃいます。

昨日久しぶりにお邪魔して

家族と楽しく会話をしていたところ、

「ウチのお袋はロクなもんじゃねえからなぁ!!」と、

友人が面白い話を喋り出したのでした。

寝たきりで家族に世話をかけているお父さんが、

時折、ボソッとおっしゃるらしいのです。

「こんなにお前らに迷惑掛けるなら死んだ方がマシだ」と。

いやいや・・・これが面白い訳じゃないですからね ^ ^;;


この言葉に返す、家族の返答が面白かったんです。

友人夫婦は「そんなこと言わないでよ・・・」と

その都度、お父さんを説得するらしいのですが、

先日、ご両親の会話をふと耳にした友人が言うには、

「もう生きとる甲斐もない・・・死んでもいいか?」と

お父さんがおっしゃったところ、

「そうしたかったらしなさいよ」と、

普通に答えていたお母さんに

「アーッ!!・・・なんちゅうこと言うんだよ」と

驚いたらしいのです。

お父さんの方は、当然妻から

「何言ってるのよ、長生きしてくれなきゃ・・・」とか、

「私をひとりにしないで下さいよ・・・」というような

返答を期待してた筈ですから、

「解った・・・お前がいいなら死ぬわ・・・」と、

その言葉にお父さん、すねちゃったらしいのですが、

お母さんの方は平然として、

「連休には孫たちが帰って来るんだから、

せめてお小使いくらいは、あなたが渡して下さいよ。

いつも、おじいちゃんに貰えると期待して来るんだから。

連休が明けたら、お好きなように・・・」だって ^ ^

「もお・・・そんな言い方があるか?」と

嘆く友人を横目に、笑っているお母さんでしたが、

ご両親の仲睦まじいことを良く知る私にとっては、

世の夫婦のいろんな励まし方、

相手の気持ちを探り合いながらの、

まさに「根比べ」とも言える日々の会話に

いろんな形の愛情表現があるんだなぁと思いながら、

友人のお母さん・・・

今度お父さんがぼやいた時はきっと、

「正月に孫がお年玉を期待して来るんだから、

渡してから死んで下さいよね」って言うんだろうなぁ。

なんて思ったオヤジなのでした ^ ^