おじいちゃんの鎌

一昨年から自宅の農業を継いで頑張っている

旧友の一人息子が居ます。

通りかかったら、道ばたで草刈りをしていたので、

声を掛けて立ち話をしていた時のことでした。


「お前、鎌が似合うようになったなぁ!」と言うと

アハハ・・・と、照れくさそうに笑っていましたが、

手に持っていた鎌を見せて

「これ、年代物なんですよ」と言うのです。


手に取って見る限りでは

そんなに古いものには見えなかったのですが、

その鎌は亡くなったおじいさんが

永年愛用していたものだということでした。


長い間の草刈り作業によって削り取られた刃は

すでに4・5回も取り替えられ、

持ち手の柄の部分も同じく

数回新しいものに替えたということで、

祖父から受け継いだ年季の入った鎌を

大切に使う気持ちに「素敵だなぁ・・・」と、

何だか私まで嬉しい気持ちになったのでした。

しかし、彼と別れて車を走らせているうちに

ハタと、つまらないことが頭をよぎったのです。

ん・・・?

刃も柄も何度か取り替えたということは、

どこにも原型は残ってない訳なんだけど・・・

モノの全体が、すっかり違う物に取り替えられても、

やっぱり「おじいちゃんの鎌」なのかなぁ?? 

なんて、アホなことを考えてしまいましたが、


そうなんだよなぁ・・・

モノなんていくらでも取り替えがきくけど、

おじいちゃんが頑張って草刈りをしてたという

懐かしい思い出だけはずっと残るんだよ・・・

旧友のお父さんが野良仕事をしている姿を

ふと思い出しながら、

「じいちゃん、孫が頑張ってるよー!!」と、

車内で大声を出してしまったオヤジなのでした ^ ^